躍進を続けるトップレベルのフランス人ジャーナリスト、女性クルド戦士を描く映画製作に

 

フランスの女性ジャーナリスト、ドキュメンタリー映像作家、そしてフェミニズム運動の先導者として高く評価されるキャロライン・フォウレストが、このたび映画監督としてデビューする。第一作のタイトルは『レッドスネーク』。クルド地区の女性戦士と世界中から支援にかけつけたボランティアの女性たちの生き様を描き、政治的な主張も込めた1本に仕上がる見込みだ。当作品は現在、撮影に向けて準備が着々と進んでおり、パレスドマルシェのレオ・メインデンバーグおよびカドゥール在住のジェド・ベン=アーマー(タラク・ベン=アーマーの息子)がプロデュースする。

この作品のストーリーは事実にもとづいて作成されている。ISIS(アイシス)に誘拐され、兵隊の性的奴隷となることを強要されたザラという名の(仮名)ひとりのヤシディ教信者である若い女性が主人公だ。ザラは命からがら女郎小屋から脱出し、「スネーク団」と呼ばれる命がけで原理主義者と闘う、世界中から結集した勇敢な女性たちの一員となる。

「スネーク隊」の一団と共に点々と旅を続けてゆく中で、ザラは他の女性たちとの絆を深めてゆく。ボロボロに傷ついたザラにずっと寄り添い、あれこれと面倒をみるリナ、いつもエネルギッシュなフランス系アルジェリア人のケンザ、「アメリカンスナイパー(アメリカの狙撃種)」の異名をとる信仰心の篤いアフリカ系アメリカ人…。そしてそんな一人の中には看護師として一団に加わったフランス系イスラエル人のヤエルがいた。

それぞれの女性が歩んできた人生はさまざまだが、彼女たちには過去に女性であるが故の困難に直面し、トラウマなどの精神的ダメージを背負って生きてきたという共通点がある。そして、全員である一つの目標を達成しようと闘っている。その目標とは、レイプや女性の奴隷化を平然とおこない、地元の若者をどんどん過激な思想の持ち主へと洗脳し続けている原理主義者の活動を止めることだ。「女性の手で殺されることは男にとって最大の恥辱であり、天国へゆくことさえできなくなる」という教えを信奉しているISISの兵士にとって、スネーク隊の女性戦士の存在はそれだけだけでも大きな脅威となりうる。

フォウレストは出演者の選出にも力を注ぎ、世界中から演技力に優れた著名なキャストを招いている。近年人気急上昇中のディラン・グゥインもそんな中のひとりだ。さらに、キャメリア・ジョルダナ、ジャスミン・トリンカ、ラザーネ・ジャマル、マーク・ライダー、コークマズ・アルスラン、ナナ・ブロンデル、アミラ・カザール、ゴールシフェット・ファラーニなどが出演者として顔を並べる。

キャロライン・フォウレストは今までに21作の社会的、政治的主張を持つドキュメンタリーを製作してきた。その彼女がこの『レッドスネーク』の構想に着手したきっかけは、2015年1月、パリで起きた「シャーリー・エブド社襲撃事件」だった。フォウレストは何十人に及ぶヤジディ教信者やクルド人戦士、ペシュメルガ(クルド自治区を守るために有志で結成された義勇軍)のメンバーやゲリラ兵士などと直接会い、入念なヒアリングと取材をもとにこの映画の脚本を執筆した。

「私は世界のさまざまな国から勇気を持って自発的にクルド人のISISに対するレジスタンス活動に合流し、活動する女性たちに大きな感銘と刺激を受けました。そしてこうした犠牲者としての現状に甘んじず、応戦しようという彼女たちの姿勢にも」。フォウレストはこう語る。

さらにフォウレストは、「この物語は現代の社会にしぶとく残る既成概念をうち破ろうという女性たちの力強さを描いたものです。こうした勇敢な女性たちが私たちのために最後の世界大戦の勝者となってくれるでしょう」とも述べています。キャロライン・フォウレストは、フランス国内では最も名誉ある賞の一つである「フランス芸術・文学賞」でナイトの称号を授与されています。

『レッドスネーク』を『ゼロダークサーティ』と『大地と自由』が融合したような作品であるとしながら、フォウレストは「この映画は強い女性を主人公にした政治的な作品でありながら、アクションシーンや一般の観衆が受け入れやすいシーンも盛り込まれており、世界中のあらゆる観衆に感動をもたらすでしょう」と自信のほどをのぞかせる。この作品では英語、フランス語、クルド語、アラビア語が縦横に飛び交う予定だが、有能な製作スタッフの手腕により観衆を混乱させないよう巧みにまとめあげられてゆくのだろう。そのクルーの中には、『マルコ・ポーロ』『コロンビアーナ』『Taken 2』で活躍したカメラマン、ロメイン・ラクーバスも参画している。

『レッドスネーク』の上映権はフランス2やイタリアの映画配給会社、イーグルなどからすでに予約を受けている。プロデューサーはフランスの上映権エージェントや配給会社とすでに交渉を進めている。

撮影は翌2月よりおこなわれる見通しだ。

 

Translated by Tomoyuki Iwata / 日本語翻訳 岩田朋之

 

 

タリク・ラマダン氏の二重生活

今、何かと物議を醸している人物、イスラム教伝道者のタリク・ラマダン氏の二面性について明らかにするため、私は長い年月を費やしました。

2009年以来、「性に対するイスラム教の認識」と題する説教の中でラマダン氏が説いていることと、実際の彼の生活ぶりにはたくさんの矛盾があり、二面性に満ちているということに私にはすでに気が付いていました。しかし、それを書いて白日のもとにさらすことは私にはまだできませんでした。このような最も深刻で重大な事実について明らかにすることは、完全な証拠と告訴している被害者なしには不可能です。偽善的であるとか女性蔑視などの病的なラマダン氏の側面はすでに多くの人の知るところですが、そうしたことを含む他の諸々のことはすべて彼のプライベートな生活に関することです。そうした個人的な諸事ではなく、私にはタリク・ラマダン氏の二面性を立証する確かな証拠があるので、同氏の側近や代理人に対して警告を発しました。しかし、何も改善はなく、状況は以前のままです。

イスラム教伝道師の一団は、「婚外性交渉はイスラム法では禁忌である」というラマダン氏の言葉を引用し続けています。それを耳にするたび、誘惑と純潔の義務について説くピューリタン的な言説に思わず私は微笑んでしまいます。「重大な罪」と題するラマダン氏の説教を録音したテープの中で、彼は男女兼用のスイミングプールにイスラムの男性が出かけることをこう強く戒めています。「そんな場所へ出かけると否応なく君は誘惑されてしまうのだ」と。

この説教の中で、ラマダン氏は集まった聴衆に向け、「健全な場所」を十分に警戒して厳選しなさいと強く訴えています。上の話でいえば「健全な場所」とは男性専用のスイミングプールということになります。録音テープの声の調子はテレビでよく聞く彼のものとは異なり、性的妄想にとりつかれ神経症的になっている一人の人間としての声に聞こえます。

クリスチャン、ムスリムの如何を問わず、原理主義者と評される伝道師の中で私が取材してきた全ての人物に共通するのは、バランスのとれた性的生活が破たんし、自分自身が信者に説いている教えからかけ離れてしまっていることです。こうした原理主義者の世界には、同性愛を嫌悪するスピーチをしながら自らは同性愛者である伝道師、小児偏愛のキリスト教宣教師、性的暴行を繰り返すムスリム主義者など、二面性のある人物が溢れています。

タリク・ラマダン氏の場合、悪名高いハリウッドのプロデューサー、ハーヴェイ・ウェインスタインに匹敵するか、場合によってはそれ以上に暴力性の高い人物と私たちは向き合っているように思えます。今日、この文章を書いていたまさにその時、ヘンダ・アヤーリという女性が勇気を持ってタリク・ラマダン氏から受けた強姦、性的暴行、性的嫌がらせ、恫喝、いじめなどについて訴えを起こしました。この問題に関心を持つきっかけとなった最初の被害者による裁判が行われることとなりました。もちろん、タリク・ラマダン氏本人は容疑を否定し、原告の女性を非難しています。

SNS を通じ、ラマダン氏代理人の一人は、世界規模でラマダン氏を擁護する運動をすでに開始しています。そして彼の支持者たちは犠牲者の訴えをおこした女性を糾弾し、後悔を迫られるサラフィストだとののしり、うそつきで売名行為をしているだけだと主張しています。しかし、彼女が訴えている恐るべき内容は事実そのもので、他の4人の被害を受けた女性が訴えている内容とまったく同じだと言っても過言ではありません。

それは2009年、タリク・ラマダン氏と私のテレビ討論前夜のことでした。フランスの新聞社はすでにこの討論が行なわれることを予告していました。その前夜、一人の女性が私に電子メールで接触してきました。そこには彼女が体験したことが綴られていました。しかしその時、私はこの女性を疑っていました。討論の際、私の失言を導くよう、偽りの告白を送ってきたのではないかと勘繰りました。タリク・ラマダン氏のことです。どんな手段を使ってくるか分かりません。私は最初、彼女に返信をしませんでした。しかし、読み進めるにつれ、彼女の言っていることが真実であることが分かってきました。私は彼女の書いていることをさらに具体的に把握するため、彼女と会ってみることにしました。ラマダン氏について自分が書いたことが事実であることを裏付けるSMSと写真を彼女は私に提示しました。さらに彼女は私に、自分と同じ目に遭った複数の別の少女も紹介しました。

すべての少女がたどった道はいずれも同じものでした。宗教的な助言を求めてラマダン氏のもとを訪ね、そこで性的関係を強制されたばかりではなく、それは非常に暴力的で侮辱的なもので、最後は口止めのために脅迫されるというものでした。私は彼女に訴えを起こすことを提案しましたが、タリク・ラマダン氏の脅迫で彼女はそれが決断できない精神状態でした。彼女は自分が常に尾行されていると思い込んでいました。そして自分のおかれた現状に耐えることができないほどに心は引き裂かれていました。これ以上、彼女に裁判を起こすなどの行動を勧めることは彼女の精神をさらにボロボロの状態に追いやってしまうので、やめたほうが良いと私の良心が審判を下しました。

私は人生の教訓とも聞こえるジョークを思い出しました。「誰もが知っているけれど、誰もそれを語らない」。その沈黙をもしも彼女が破った時、どんな大きな禍いが彼女の身に降りかかるか、だれもまったく想像することができません。しかし今、ヘンダ・アヤーリは勇気を振り絞り、状況は変化しつつあります。私に課せられた義務は、被害に遭った女性をすべて招き、マスコミの前で、もしくはヘンダの裁判の場で証言をしてもらうことです。彼女がひとりぼっちにして見捨てられることのないよう、この状況に立ち向かわなければなりません。

キャロライン・フォーレスト氏は極右の国民戦線党からイスラム主義者まで「原理主義者」と呼ばれる団体や人物を告発する著作により広くフランスでは知られたジャーナリストです。2004年、彼女はタリク・ラマダン氏の二面性を訴える1冊の書籍を上梓しました。

翻訳 : 岩田 朋之